イギリス出身のBen Eine (ベン・アイン)、本名Ben Flynnは14歳からグラフィティーをはじめ、現在はロンドンとサンフランシスコをベースに世界中で活躍するストリート出身のアーティストです。

彼の才能はアート学校ではなく学生時代のストリートペイントを通じて磨かれました。
アートスタイルはTypography(タイポグラフィー)という、オリジナルのフォントで描かれるアルファベットを使ったグラフィティーです。タイポグラフィーを用いたアートの興味深い点として、国や文化によって捉えられる意味が違うということがあります。例えば「GREAT ADVENTURE」というフレーズを各国でペイントしたところ、心に響いたポイントがそれぞれ異なるという結果が出たといいます。

Ben Eineの作品は自分で文字の型を切り取っているため、文字の形は完璧ではありません。しかし、その絶妙なズレや、上下左右非対称のバランスからは、フォトショップ等ではマネできないハンドメイドの美しさを感じることができます。彼と親交が深く、有名なグラフィティーアーティストのBanksy(バンクシー)とは異なり、Ben Eineの作品には何か政治的な問題を訴えるわけではない、ただ単純に環境とアートが一体となる瞬間を楽しんでいる様子が感じられます。

―本人略歴―

タクシーの運転手をしていた父親Richard と専業主婦だった母親のPatsyの間に生まれる。Eineは父と母、もう一人の兄弟に連れられ市外へと引っ越したが、そこでは常に万引きや車の窃盗などの悪さをする仲間のグループに入ってしまう。しかし純粋なEineは人に直接的に迷惑をかけるということにのめり込むことは無かった。
14歳の頃、HipHopカルチャーが一躍ブームとなり、彼はその中のグラフィティーに特に心を奪われる。 初めは教科書や机での落書き程度だったが、彼のアートは少しずつエスカレートし最終的にはバス停や路地裏の壁などに描いていた。その後15歳の時に学校を離れ、親に迷惑かけたくない思いから実家を出て、保険会社に勤務した。しかしその仕事は全く彼の性に合わなかった。Eineはよくスーツ姿で会社を抜け出しては、電車や店のシャッター等に絵を描いていたという。
ヴァンダリズムで警察に捕ることもしばしば。彼の給与は罰金や保釈金を払うためにほとんど使われていたが、それでも彼のグラフィティーに対する情熱は収まらなかった。

12年間続けた保険会社を退職し、Shoreditchにあるバーで働き始める。そこでBanksy 、Shepard Fairey、Jamie Hewlett、と Ikonに出会い、特にBanksyとは親しく、世界中を回りながら自分たちのグラフィティーアートを広めていった。同じころに“VANDALS”という独自ブランドのスウェットもデザインし、さらにPictures on Walls というスクリーンプリント会社でも仕事を始める。ここで彼はBanksyを含め様々な有名アーティストのプリントの制作にも携わった。2008年に自分のアートを作りたいという思いでPictures on Wallsを退職。ソロ活動を始める。

その後、電車で友人とタギング(個人またはグループのマークを各所に描いて回る行為)していたところを警察に見つかり、友人二人が逮捕される事件が起きる。かねてから牢獄だけは避けたいと思っていたEineは幸い逮捕されること免れたが、これをきっかけにグラフィティーに対するアプローチを変えることになる。それ以降、彼はお店の人に許可を得てから描くようにする、法律を尊重しながらもアートで街づくりをするというスタイルに移行した。

彼の代表的な作品として2010年の、Hackney のMiddlesex road にある商店街のシャッターにアルファベットを一文字ずつペイントしたものが挙げられる。
その通りは今やAlphabet Roadとも呼ばれるほど有名になった。そして2011年、Ben Eineの作品がイギリスのPMからオバマ大統領にプレゼントされ、一躍有名となる。

彼は自身の作品をラグジュアリーアイテムとしてのイメージを保ちたいと言っており、アートコレクターも欲しがるような価値のある作品を作りたいと思っている。よくストリートアーティストと位置づけされるが、それは彼の意に反すると言っている。今後もいわゆるストリートアートと主流の美術界でのクロスオーバーに期待している。