LOVERS : Special Interview
イラストレーター
ソリマチアキラ
from Fox Umbrellas
写真・文:一史
ソリマチさんはクラシックな装いの世界を表現するイラストレーター。自身の服装も時代に左右されない上質なモノを好む。その彼が愛用の傘と、雨の日の着こなしを披露してくれた。高品位な傘と暮らす愉しみを語った数々のエピソードとともに。
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深いグリーンの色が印象的なこの傘が、ソリマチさんのワードローブに加わったのはいつでしょうか?
「2年ほど前です。それまでフォクス アンブレラズ(以下、フォックス)の折り畳み傘をよく使っていましたが、再び長傘に気持ちが向いています。実は僕が人生で初めてしっかり選んで購入した傘がフォックスでした。20代の若い頃で『いい傘なら英国のフォックス』とされる銘品がほしくなりまして。傘の軸が一本の木でできた凝った品でした。購入した店はたしか東京日本橋の丸善だったと記憶しています」
愛用の傘を手に、傘によく似合う雨の日の装いをしたソリマチさん。
畳むとステッキのように細く整うのがフォックスの大きな特徴。
靴もバッグもたくさんの有名ブランドが世界中にあるなかで、傘はフォックスがワンアンドオンリーの存在のようですね。多くの人を魅了する良さはどこにあるのでしょうか。
「まず畳んだときの佇まいの美しさ。ステッキのような美しさがあります。英国紳士を生んだ国らしさを感じるところです。英国の傘ブランドのなかでも、適度にモダナイズされている点にも個性があります。スタイルジャンルを問わず持てますから、どんな服装でも自由に組み合わせられます」
開いたとき、まさに“こうもり傘”である深い凹凸のある形になるのも印象的です。
「その通りですね。骨と生地のハリに“しなり”を感じます。英国の傘に共通するスタイルでもあるのでしょう。フォックスは骨の山を高くして凹凸をより強調しているようです。僕はイラストを描くとき、デフォルメ表現をよく使います。英国調の雨のシーンのときにキャラクターに持たせる傘も、深くしなったこうもり形状にします。こうすることで英国らしさが絵に表れてくると考えています」
雨を弾く実用性の高いダイナミックなシルエット。
内側の骨の一本にロゴ刻印がある。傘をさす人だけが眺める密かな愉しみだ。
開いたときにカチッと精密な音がして金具が固定され、ライターの開閉音のように男ゴコロをくすぐる要素もあります。この味わいについてはいかがでしょうか。
「確かに使う感触もいいですね。さらに畳むとき『ボンッ』という音がするのも心地いいです。音と感触はとても大事です。フォックスという歴史あるメーカーの“色”を感じます」
雨の日の外出先で、傘を傘立てに置くのが不安なときがあります。間違えられたり盗難に合いそうで……。ソリマチさんはどのように持ち歩きますか。
「フォックスの傘は職人さんが丁寧に仕立てた工芸品です。優れた品ですので鞄と同じ感覚で持ち歩いています。常に手元に置き、傘立てに放置することはしなくていいと思います。部屋に飾ってもサマになる工芸品ですから」
愛用の傘の留め具には「SORIMACHI」のネームタグが。昔オーダーしたバッグの付属品を流用したそう。
着込んだシワも味になるコットンスーツが本日のファッションの主役。ウールほどドレッシーにならない絶妙なスーツだ。
本日のソリマチさんの服装はすべて私服で、コーディネートもご自身によるものです。着こなしのポイントをご指南いただけますか。
「このコットンスーツを選んだいちばんの決め手は、やや黄色がかったベージュの色です。付き合いの長いテーラーのバタクで仕立てたオーダー品。傘のモスグリーンの色に映えると思い決めました。僕は雨の日でもスーツをよく着ます。例えば銀座や青山のレストランに行くときなどに。雨の日だからジャケット類を着ないということはありません」
靴は茶系のウィングティップですね。英国紳士のルールで考えるならフォーマル用途ではないのでしょうが、現代の感覚で見るととてもドレッシーです。なぜこの靴を選ばれたのですか。
「実は革底にゴム貼りを加えているのです。雨の日に履きたくて修繕してもらいました。もう20年以上履き続けているでしょうか。アッパーがガラス加工のレザーで、水が染み込まないのも雨の日に向く理由です。このほかにはスエードの靴もよく履きます。水濡れに弱そうなイメージがありますが、実は乾いたあとに表革よりシミになりにくいメリットがあるのです。本来は砂漠用だったデザートブーツも、僕は雨の日によく履いて出かけます」
足元は靴底を雨仕様にカスタマイズした、英国のチャーチの定番「バーウッド」。
時計はオメガがイギリス陸軍のために製造した1940年代のミリタリーウォッチ。
雨というアクティブなシーンには、組ませる服装も小物もニュアンスを揃えることでストーリーを演出できるのですね。
「このフォックスの傘は色がモスグリーンですから、秋冬に着るツイードのジャケットにもよく似合います。英国の生地はチェック柄にグリーンを含めることが多いですから。ロンドンシティというよりカントリーの色だと思います。僕はオリーブグリーンのコートも持っていて、それと色合わせするのも好きです。これからの寒い季節を楽しみにしているところです」
Profile
1966年東京生まれ。独学でイラスト描きの技術を習得し、91年よりフリーのイラストレーターに。 雑誌の挿絵、広告などを手掛けている。「いいモノを修理して長く使うのが好きなんです」と自分定番への思いを語るウェルドレッサー。
Works
2010年代に紳士向けWEBマガジン「BOQ」に提供したイラスト。
フォックス アンブレラズの販促イベントのために描いた特別な作品。
イラスト:ソリマチアキラ